皮膚筋炎・多発性筋炎について

分類

皮膚筋炎・多発性筋炎に類する疾患にはいろいろあり、分類が試みられてきました。近年は、そういった原因不明の炎症性筋疾患を集めて以下の7つに分類されます。
皮膚筋炎・多発性筋炎の分類
1.多発性筋  2.皮膚筋炎 3.無筋症性皮膚筋炎 4.若年性皮膚筋炎 5.悪性腫瘍に合併した筋炎 6.膠原病合併筋炎 7.封入体性筋症
その中に、皮膚筋炎や多発性筋炎等が含まれます。

  • 多発性筋炎は、成人にみられ、慢性間質性肺炎、関節炎を合併しやすい特徴があります
  • 無筋症性皮膚筋炎は、筋肉の症状がごく僅かか、全くありませんが、典型的な皮膚症状がある場合で、急性で重症な間質性肺炎の合併率が高いことが特徴です。
  • 性腫瘍に合併する筋炎は、比較的高齢に発症し、悪性腫瘍が筋炎発症前後1年にみられ、比較的皮膚筋炎に多くみられます。
  • 若年性皮膚筋炎は、名前のように、小児にみられる皮膚筋炎で、血管炎を合併しやすのが特徴ですが、症状が安定すれば、成人期には寛解することが多くみられます。
  • 膠原病合併筋炎は、強皮症、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群等に合併がみられます。比較的軽症の筋炎が多いが、多発性筋炎等と変わらない症状がみられる場合には、二つの膠原病が同時にみられることより、オーバーラップ(重複)症候群とも呼ばれます。
  • 封入体性筋症は、病理組織所見で、筋肉内に封入体がみられるのが特徴で、筋炎の所見が中心で、他の臓器症状はみられず、難病にも指定されません。

臨床症状

  • 筋肉症状
    筋炎という病気のため、殆どの患者さんが何らかの筋肉が障害がみられます。症状は、多彩ですが、主として、疲れやすくなったり、力が入らなくなったり(筋力低下)します。しかし、緩徐に発症することが多く、はじめは筋肉の症状と気付かない患者さんもいます。躯幹に近い近位筋群が障害されやすいとされています。そんため、下肢の筋力低下により「しゃがんだ姿勢から立ち上がるのが困難」「風呂に出入りするのがつらい」「床から起きにくい」「階段が昇りにくい」などの症状、上肢の筋力低下により -「洗濯物を物干しにかけるのがつらい」「髪がとかせない」「高いところの物をとれない」「手に持ったものが普段より重く感じる」などの症状がみられます。首の筋肉の障害により「頭を枕から持ち上げられない」などの症状を認めます。物を飲み込むのに必要な筋肉(後咽頭筋)や、言葉を話すのに必要な筋肉(構語筋)が障害されると「物が飲み込みにくい」「むせる」、「鼻声になる」などの症状がみられます。さらに筋障害が強くなると、立てなくなったり、ベッド上の生活,車椅子の使用を強いられることも希にあります。また、急性に発症すると筋肉痛を認めることもあります。
  • 皮膚症状
    両側あるいは片側の眼瞼部の紫紅色の浮腫性(腫れぼったい)皮疹(ヘリオトロープ疹)、手指関節背面の皮が剥けた紫紅色の皮疹(ゴットロン徴候)が特徴的です。また、肘や膝などの関節の背面に、少し隆起した紫紅色の皮疹もみられます。四肢の皮疹は時に潰瘍を形成することもあります。これらの皮疹をもっている場合には、皮膚筋炎と診断されます。
  • 関節症状
    約30%の患者さんに関節痛・関節炎が認められます。しかし、腫れたり、赤くなったりせず、持続時間も短く、軽症のことが多いと言われています。関節リウマチのように、関節が破壊されたり、変形したりすることは稀です。抗J o-1抗体が陽性の場合、関節炎がみられやすい傾向があります。しかし、一部の筋炎では関節リウマチを合併することもあります。
  • 呼吸器症状
    肺に炎症(間質性肺炎)が起こり、咳や息切れ、呼吸困難などの症状を認めることがあります。間質性肺炎と呼ばれており、急性のものや慢性に進行するものなどいろいろ種類があります。胸部レントゲン検査、胸部 CT検査、肺生検の検査で診断され、約 30-40%に合併します。無症状のこともまれにはありますので、一度は、胸部 CT検査での確認と定期的にチェックすることが大切です。
  • 心症状
    筋炎では、骨格筋が障害されますが、心臓の筋肉も障害されることがあります。そのため、不整脈を起こしたり、心臓の力が弱ったりし、心不全を起こすこともあります。
  • レイノー現象 (寒冷など刺激で手指が白や紫になり、ジンジンしびれたりする症状)
    約20-30%の患者さんでみられます。しかし、強皮症の患者さんと違い、軽症のことが多い
  • 全身症状
    その他の膠原病と同様に、発熱(高熱が出ることは希です)、全身倦怠感、食欲不振、体重減少などを認めることがあります。
  • 悪性腫瘍
    主として皮膚筋炎や多発性筋炎の一部に、悪性腫瘍の合併がみられます。通常は、筋炎の発症の前後 1年以内に悪性腫瘍が見つかることが多いとされています。再燃時にも同様な傾向がみられます。悪性腫瘍の種類では、日本人では、日本人多い悪性腫瘍の合併がみられます。すなわち、男性では、肺癌、胃癌、大腸癌で、女性では、乳癌、子宮癌、胃癌などです。合併の原因は明確ではありませんが、筋炎を発症する免疫の異常が、癌の発症を抑える免疫の機構に類似しているため、筋炎に関連した免疫異常が癌を発症しやすくするとされています。癌の治療を行うと、筋炎が軽快する場合もあります。
  • その他
    筋肉の障害による症状 (筋力低下 )は、ほとんどの患者さんに認められます。さらに、筋肉以外の症状 (内臓などの障害 )も認めることがあります。これらの筋以外症状は決して全ての症状が起こるのではなく、病型により、患者さん一人一人によって症状も障害される臓器も異なります。全く内臓が障害されない、軽症の患者さんもみられます。